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在職老齢年金は不公平なのか——働くと年金が減る仕組みと2026年の緩和

FP学習のコツ最終更新 2026-08-10

執筆・編集:コツコツFP編集部/編集長:Taro

厚生年金の保険料を納めながら働いていても、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になることがあります。保険料の負担と年金の支給停止が同時に生じるため、「納めているのに減らされるのは不公平だ」という批判が以前からある制度です。

この仕組みが在職老齢年金です。厚生年金に加入して働く人(70歳以上で適用事業所に勤める人を含む)が老齢厚生年金を受け取るとき、給与・賞与と年金の合計が基準額を超えると、年金の支給が止まります。国会でも廃止論がくり返し取り上げられ、2026年4月には基準額が月51万円から65万円へ引き上げられましたが、制度自体は残りました。

この記事では、支給停止の仕組みと、何が不公平だと批判されているのか、それでも廃止されなかった理由を順に整理します。

働きながら年金を受け取る人と、給与と年金の合計を仕切る基準額の壁のイメージ

仕組み:合計が月65万円を超えた分の半分が止まる

支給停止の判定に使うのは、次の2つの合計です。

  • ・基本月額(加給年金額を除く老齢厚生年金の月額)
  • ・総報酬月額相当額(標準報酬月額+直近1年間の標準賞与額÷12)

合計が支給停止調整額(2026年度は月65万円)を超えると、超えた分の2分の1の老齢厚生年金が支給停止されます。

では、実際にいくら止まるのでしょうか。たとえば基本月額12万円、総報酬月額相当額60万円の場合、合計は72万円で、基準額を7万円超えます。停止されるのはその半分の3.5万円で、老齢厚生年金は月8.5万円になります。

止まるのは老齢厚生年金だけです。老齢基礎年金は、収入がいくらあっても全額支給されます。

何が不公平だと批判されているのか

批判には大きく2つの論点があります。

保険料を納めている人も停止の対象になる。 70歳未満で厚生年金に加入して働く人は、保険料を納めながら、同時に支給停止を受けることがあります。納めた保険料はその後の老齢厚生年金額に反映されるため、掛け捨てではありません。65歳以上70歳未満の人なら、在職定時改定により毎年10月に反映されます。ただ、現在の停止と将来の増額は時期が離れているため、負担と給付の関係が分かりにくいという指摘があります。

判定に使うのは給与・賞与だけ。 総報酬月額相当額に入るのは、厚生年金の標準報酬、つまり働いて得る給与・賞与だけです。不動産所得や配当所得は、いくらあっても判定に含まれません。また、厚生年金に加入しない自営業者やフリーランスは、収入が高くても対象外です。同じ高収入の高齢者でも、会社で働く人の年金だけが減ります。この扱いの差が、公平性への批判の中心です。

それでも制度が残っている理由

これだけ批判がありながら、なぜ廃止されないのでしょうか。1つめの理由は、年金の性格です。老齢年金は、高齢になって働けなくなったときの所得を保障する保険として設計されています。一定額以上の給与を得ている間は所得保障の必要性が相対的に低い、というのが支給停止の根拠です。

2つめの理由は財政です。支給停止をやめれば厚生年金の給付費が増え、年金財政の収支が悪化します。その影響は、将来世代が受け取る給付水準に及びます。しかも、廃止によって給付が増えるのは、給与と年金の合計が基準額を超えている収入の高い層に限られます。厚生労働省が改正時に示した試算では、基準額の引き上げにより、支給停止の対象者は約50万人から約30万人に減り、年間の支給停止額は約4,500億円から約2,900億円に縮小すると見込まれています。廃止すれば、給付の増加はこれよりさらに大きくなります。

一方で、支給停止を避けるために就業時間や役員報酬を抑える「働き控え」も問題になっていました。高齢者の就労を促したい政策と、働くほど年金が減る仕組みは方向が逆だからです。2025年の年金制度改正は、働き控えの解消と将来世代の給付水準の両方に配慮して、廃止ではなく基準額の大幅な引き上げを選びました。

公平性の評価は、比較する対象によって変わります。給与を得る人と資産所得を得る人の比較では所得の扱いの差が問題になり、現在の受給者と将来世代の比較では年金財政への影響が問題になります。

制度は対象範囲と基準額を変えてきた

かつての厚生年金は、在職中は老齢年金を支給しないのが原則でした。1965年に、在職中でも一定の年金を支給する仕組みとして在職老齢年金が導入されました。その後は対象年齢や計算方法が何度も見直され、近年は支給停止基準額の引き上げが続いています。

2026年度の65万円は、改正法が定めた62万円(令和6年度価格)に賃金スライドを反映した金額で、今後も毎年度改定されます。


試験でのポイント(ひっかけ注意)

1. 「超えた分の全額が停止」は誤り。停止は超過分の2分の1です。 2. 「老齢基礎年金も停止される」は誤り。対象は老齢厚生年金のみで、基礎年金は全額支給です。 3. 総報酬月額相当額は賞与込みです。標準報酬月額+(直近1年の標準賞与額合計÷12)で計算します。賞与を忘れると判定を間違えます。 4. 基準額は2026年度で月65万円。「51万円」「50万円」は令和7年度以前の旧水準です。65歳未満と65歳以上で同じ基準額です。 5. 支給停止された分は、繰下げ増額の対象外です。「繰り下げれば停止分も増える」という選択肢は誤りです。


まとめ

  • ・停止されるのは、基準額(2026年度は月65万円)を超えた分の2分の1。対象は老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金は全額支給
  • ・判定に使うのは給与・賞与(総報酬月額相当額)だけ。不動産所得や配当所得は含まない
  • ・停止分は繰下げ増額の対象にならない

関連する用語

  • 在職老齢年金
  • 在職定時改定
  • 老齢厚生年金
  • 老齢基礎年金
  • 老齢年金の繰上げ・繰下げ
  • 加給年金

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