コツコツFP用語辞典
コツコツFP 用語辞典›ライフプランニング

遺族給付の全体像

3級から

FP3級から出てくる用語です。2級・1級でも必要になります。

公的年金は「長生き(老齢)・障害・死亡」の3つのリスクに備える保険で、死亡に備える部分が遺族給付です。制度がいくつもあって混乱しますが、設計の考え方はシンプルで、「誰を守るか」で2階建て+穴埋めパーツになっています。

  • ・遺族基礎年金=「子育て保険」。全国民共通の1階部分。子のある配偶者か子にしか出ません。国が最優先で守るのは「遺された子どもの生活」で、大人は自分で働ける、という割り切りです。
  • ・遺族厚生年金=「収入の上乗せ保障」。会社員・公務員(第2号)の遺族に、亡くなった人の報酬比例部分の4分の3。生前の収入水準をある程度守る2階部分です。

この2階建てだけだと「子のいない妻」に穴が空きます。そこで穴埋めパーツが3つ。

  • ・中高齢寡婦加算(会社員の妻・40〜65歳)…遺族厚生はあるが遺族基礎がない中高年の妻への上乗せ
  • ・寡婦年金(自営業の妻・60〜65歳)…遺族厚生がそもそもない第1号の妻の「つなぎ年金」
  • ・死亡一時金(自営業)…保険料の掛け捨て防止の払い戻し

「基礎=子ども、厚生=収入、残りは穴埋めパーツ」——この一行で全体が整理できます。

なぜ遺族基礎年金は「子がいる家庭」にしか出ないのか

基礎年金の役割は最低限の生活保障です。遺された大人は自分で働けるのが前提ですが、子どもを育てながらだと働き方が制限されるため、その期間だけ国が支えます。

だから支給対象は「子のある配偶者」または「子」だけで、期間も子が18歳到達年度末(障害等級1・2級なら20歳未満)までの期間限定。子が育ちきったら役割終了で打ち切られるのも、「子育て保険」という性格から自然に導けます。

金額も「基本額+子の加算」という構造で、子どもの人数に応じて増えます。

なぜ会社員の遺族は手厚いのか(遺族厚生年金+中高齢寡婦加算)

厚生年金は収入に比例して保険料を多く払っているため、遺族への保障も収入比例(報酬比例部分の4分の3)で手厚くなっています。

それでも「子のいない妻」には遺族基礎年金が出ないため、夫の死亡時に40歳以上65歳未満の子のない妻には、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算を上乗せします。再就職が難しい年代の生活を、妻自身の老齢年金が始まる65歳までつなぐ役割です。

逆に、夫死亡時に30歳未満の子のない妻の遺族厚生年金は5年間の有期給付。若ければ生活再建できる、という設計思想の裏返しです。

なお、2025年成立の年金改正で、子のない配偶者への遺族厚生年金は2028年4月から段階的に見直し(男女とも原則5年有期へ)が予定されています。試験は施行前の現行制度で解答します。

なぜ自営業には寡婦年金・死亡一時金という別パーツがあるのか

自営業者(第1号被保険者)には2階部分(遺族厚生年金)がありません。夫が保険料を長年納めたのに年金を受けずに亡くなると、保険料がまるごと掛け捨てになってしまいます。それを防ぐのがこの2つです。

  • ・寡婦年金…夫の第1号期間(納付+免除)10年以上・婚姻10年以上の妻に、60歳から65歳まで、夫の老齢基礎年金の4分の3。妻自身の年金が始まるまでの「つなぎ」。
  • ・死亡一時金…保険料納付36か月(3年)以上の人が死亡したとき、遺族に12万〜32万円の一度きりの払い戻し。

両方の要件を満たしてもどちらか一方を選択。同じ「掛け捨て防止」という目的の給付を二重取りさせないためです。

全体マップ(誰が亡くなった × 誰が遺されたか)

表:遺族の状況別にみた自営業者と会社員の遺族給付の違い

寡婦年金・死亡一時金には、夫の保険料納付の期間や婚姻期間、生計維持などの要件があります。要件を満たす場合でも、寡婦年金が支給されるのは60歳から65歳までです。

この表を書けるようになれば、遺族給付の問題はどの角度から出ても対応できます。"子ども"と"収入"の2軸で考え、穴を埋めるパーツを思い出すのがコツです。

⚠️ 試験のひっかけポイント

  • ・

    「子のいない妻にも遺族基礎年金が支給される」は誤り。遺族基礎年金は子のある配偶者または子だけ(子育て保険だから)

  • ・

    中高齢寡婦加算は遺族厚生年金への加算。妻が遺族基礎年金を受けられる間は支給停止(両方の上乗せはしない)

  • ・

    寡婦年金と死亡一時金はどちらか一方を選択。併給できない

  • ・

    遺族厚生年金の4分の3は報酬比例部分の4分の3(老齢厚生年金の全体ではない)

  • ・

    「夫死亡時30歳未満の子のない妻の遺族厚生年金は終身」は誤り。5年間の有期給付

執筆・編集:コツコツFP編集部/編集長:Taro

内容の確認情報

主な一次資料・確認先

  • 日本年金機構:年金の制度・手続き
内容確認・法改正への対応方針を見る →

関連用語

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金
  • 中高齢寡婦加算
  • 寡婦年金・死亡一時金
  • 国民年金の被保険者種別
  • 国民年金
  • マクロ経済スライド
  • 国民年金保険料の免除・猶予

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